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(自称)落下王はいつも落ちてた追憶


妄想が広がリング

 不景気の影響か、最近ではよく街中で、閉店(営業終了じゃなく、潰れたってほうのね)している店を見かける機会が多くなってきた。今までは田舎だけでの生活だったので、店の数自体が少なく、あまりそう感じたりはしなかったが、今は学校のために都会まで出てきている身。都会となると店の数も段違いで、結果として閉店している店をよく見るようになった。
 先日も友達と買い物に出た帰りに、一件見つけた。建物はいかにも昭和といった感じの、多少古い印象を受ける店だった。何を売っていたのか気になって店名を見てみると、○○瓦店、とあった。
 周りを見渡せばビルがいくつも聳え、マンションがその合間を埋めるようにして建っている。さらのその隙間を、服屋やファーストフード店、スーパーやコンビニが埋めている。どれもが近代的というか洋風のつくりで、瓦を使っている建築物など到底見当たらない。昔は違ったのだろうが、今のこんなところでは潰れてしまって当然だろうと思う。

 どんな人が店長だったのだろうか。建物を見ると二階部分が住居になっていたので、一家で経営していたのだろう。きっと昭和の中ごろからやってた老舗なんじゃないかぁ……すると店長は初代職人爺さんの子供といったところか。歳は40~50くらいだっただろう、多分。
 子供もいたんだろうなぁ。店が潰れてしまっては、子供がもう一人立ちしてるならばいいけれどそうでないなら、稼ぎが無くなっては困ってしまうだろう。新しい職を探さなければならない。しかし今のこの不景気の世で、そう簡単に職が見つかるとは思えない。主人は迷いに迷った結果、ビルの清掃要員として一応の再就職を果たす。
 スーツに身を包んだキャリアーマン達の横で、青い清掃用の服を着込んだ主人は暗い顔をしながら各部屋のゴミを回収して廻る。その姿は他の人にはほとんど写っていない。トイレの掃除や床掃除など、やることはたくさんだ。日に日にその体の疲れが蓄積され、平日の真昼間から疲れきった顔をしてる。
 夜、仕事を終えて家へ帰宅する。前の住まいは借金の肩で売り払い、今では安いマンションの狭い室内で一人暮らし。妻は実家へ帰り、子供はこんな生活を捨て、どっかへ出て行ってしまっている。夜の喧騒から離れたその部屋で一人、帰り際に買って来たコンビニ弁当を黙々と食べる。食べ終わればもうやることはない、さっさと寝て明日に備える。
 娯楽も、楽しみも、憩いもなにもない生活。それが明日も明後日も、これから先もずっと続いていく――。もはやその現実に絶望することにも疲れ切った主人は、光の灯っていない目をゆっくりと閉じ、深い闇へと沈んでいく……。


「おいゾンル、そんなとこで立ち止まってどうした?」
 友の声で、ふと我に返った。
「なんでもない」 作った笑みを見せ、平静を装う。「なんでもないよ」
 去り際にもう一度だけ、その潰れた店を見た。コンクリートジャングルと化す前のこの街で、子供の小さな背中を見送る主人の姿が、ほんの一瞬だけ私の目に写った。











 オチ。
 閉店、という告知の下に書かれていた文章。
「当店は○○市○○町へと移店し、リニューアルオープン予定です。オープン予定は○月○日を予定しております。ご期待ください!」

 ……意外と儲かってたんだね、この瓦屋。('A`)
by zonru | 2005-06-15 23:29

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by zonru
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